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新しい「ミサの式次第と第一~第四奉献文」等の実施に向けて

新しい「ミサの式次第と第一~第四奉献文」等の実施に向けて 変更箇所について

新しい「ミサの式次第と第一~第四奉献文」で変更される、会衆と奉仕者が唱える箇所を具体的に見ていく前に、ミサの構造について簡単に確認したいと思います。 ミサは、〈開祭〉〈ことばの典礼〉〈感謝の典礼〉〈閉祭〉という四つの部分で構成されています。〈開祭〉と〈閉祭〉は司式者の席で行われ、〈ことばの典礼〉は朗読台、〈感謝の典礼〉は祭壇で行われます。聖堂の内陣の大きさや構造、配置などによって若干の違いはありますが、基本的に「どこで行われるか」によって「今、何が行われているか」が分かります。

開祭 【あいさつ】

司「主は皆さんとともに」 会「またあなたとともに」

「司祭とともに」という言葉が使われて来ましたが、ここでの「司祭」とは「祭儀を司る者とともに」という意味です。しかし、カトリック教会には叙階の秘跡を受けた「司祭」がおり、さらに、小教区でミサを司式するのが「司祭(神父)」であることが多かったので、「司祭」という言葉を「祭儀を司る者」というより「叙階を受けた司祭」という意味で受け取られるのは自然なことだと思います。例えば、「司教が司式するミサで『司祭とともに』と言う時に違和感を覚える」という原因もここにあると思います。 この箇所のラテン語規範版には「祭儀を司る者」という言葉は無く、直訳すると「またあなたの霊とともに」となります。しかし、日本語の「霊」は、人それぞれに様々な意味に受け取られるので、他の国々や他教派の式文を参考にして「霊」という言葉は使わずに「またあなたとともに」となりました。「あなた」という呼びかけは、日常生活の中で使われることがほとんどありませんから、慣れるまで少し妙な感じがするのは仕方がないでしょう。

【回心の祈り 一 】

司「全能の神と」 会「兄弟姉妹の皆さんに告白します。…  …すべての天使と聖人、そして兄弟姉妹の皆さん…」

「兄弟」が「兄弟姉妹」に変更されて、より普遍的な(いつでもどこでも誰にでも当てはまる)唱え方になりました。 この時、唱え始めから「アーメン」まで、手を合わせて頭を下げます。このような姿勢で、罪を悔いる心を表しますが、これは「日本のための適応」、つまり「規範版のとおりではなく、日本の習慣や言語に合わせて変更され、典礼秘跡省の認証を受けたもの」です。

【回心の祈り 二 】 全員で唱えるようになっていましたが、規範版に従って司式者と会衆が対話形式で唱えるように変更されました。 ※式文は省略します。

【回心の祈り 三 】 連願形式で唱えることに変更はありませんが、「あわれみたまえ」という言葉が、司式者は「いつくしみを」、会衆は「いつくしみをわたしたちに」と変更されています。 また、「日本のための適応」として典礼歴に合わせた例文が加えられました。 ※式文は省略します。

【いつくしみの賛歌(キリエ)】

先「主よ、いつくしみを」 会「主よ、いつくしみをわたしたちに」

式文が「あわれみたまえ」という文語から、「いつくしみを(わたしたちに)」と口語で唱えるように変更されます。歌う時のことを考え、「いつくしんでください」ではなく、「いつくしみを」となりました。会衆が唱える言葉に「わたしたちに」を加えることで、神への強い願いを表しています。 式文に合わせて、表題も「あわれみの賛歌」から「いつくしみの賛歌」に変更されました。なお、ギリシア語の読みをそのままラテン語で記した式文がラテン語規範版に載せられているので、日本語版にもカタカナにした式文が加えられています。

【栄光の賛歌(グロリア)】

天には神に栄光、 地にはみ心にかなう人に平和。 神なる主、天の王、全能の父なる神よ。 わたしたちは主をほめ、主をたたえ、 主を拝み、主をあがめ、主の大いなる栄光のゆえに感謝をささげます。 主なる御ひとり子イエス・キリストよ、 神なる主、神の小羊、父のみ子よ、 世の罪を取り除く主よ、いつくしみをわたしたちに。 世の罪を取り除く主よ、わたしたちの願いを聞き入れてください。 父の右に座しておられる主よ、いつくしみをわたしたちに。 ただひとり聖なるかた、すべてを越える唯一の主、 イエス・キリストよ、 聖霊とともに父なる神の栄光のうちに。アーメン。

※口語に変更された箇所が多く有りますので、全文を載せました。 聖書朗読や祈願などでは、「御子」は「おんこ」と読むように統一されていますが、栄光の賛歌では「みこ」という読みがあえて残されました。混乱しないように表記は「み子」となっています。 「天には神に栄光」という歌い出しは、司祭だけでなく、適当であれば先唱者や聖歌奉仕者が担当することもできます。 なお、表題にラテン語の表記「グロリア」が追加されています。

【集会祈願】 司式者が唱える集会祈願の「結びの定句」が、三種類になりました。 ①祈りが御父に向かう場合 司「聖霊による一致のうちに、   あなたとともに神であり、世々とこしえに生き、治められる御子、  わたしたちの主イエス・キリストによって。」 会「アーメン」

②祈りが御父に向かうが、結びが御子に言及されている場合 司「主キリストは、聖霊による一致のうちに、   あなたとともに神であり、生きて、治めておられます、世々とこしえに。」 会「アーメン。」

③祈りが御子に向かう場合 司「あなたは、聖霊による一致のうちに、   御父とともに神であり、生きて、治めておられます、世々とこしえに。」 会「アーメン。」

①の「わたしたちの主イエス・キリストによって。」と言われれば「アーメン。」と自然に続けられますが、②と③の「世々とこしえに。」という終わり方は今までありませんでしたから、「アーメン。」と続けるのは難しいと思います。これは少しずつ慣れていくしかなさそうです。

ことばの典礼 【第一(第二)朗読】 朗読の終わりに

朗「神のみことば」

会「神に感謝」

今まで、朗読の後に侍者が「神に感謝」と言うと、会衆が「神に感謝」と答える、あるいは、朗読が終わると朗読者は無言のうちに席に戻る、など小教区の伝統や主任司祭の意向などによってさまざまでした。 今回の改訂で、規範版に従って、朗読が終わると朗読者は手を合わせてはっきりと「神のみことば」と言うことになりました。 会衆の「神に感謝」という言葉の後、朗読者は聖書に一礼してから自分の席に戻ることになりますが、これは「日本のための適応」、つまり「規範版のとおりではなく、日本の習慣や言語に合わせて変更され、典礼秘跡省の認証を受けたもの」です。 「朗読の終わりに何も言わないなら侍者の役割が無くなる」と思われるかも知れませんが、朗読者を先導して朗読台に案内すること、朗読聖書の朗読箇所を間違えた時や見つからない時に朗読者を助けること、会衆に聞こえやすいようにマイクの向きを調整することなど、侍者の役割はあると思います。 なお、現在、日本カトリック典礼委員会が信徒の奉仕の分野についてまとめているそうなので、ここで触れた侍者の役割などについては、別の機会に改めて説明できたらと思っています。

【福音朗読】 朗読の前に 司「主は皆さんとともに」

会「またあなたとともに」

司「〇〇による福音」

会「主に栄光」

朗読の終わりに

司「主のみことば」

会「キリストに賛美」

開祭でも触れましたが、会衆は「またあなたとともに」と答えるように変更されます。 すでに実践していることと思いますが、福音朗読の前に「司祭(助祭)が額と口と胸に十字架のしるしをする時、その場にいるすべての人も同じように十字架のしるしをする」と所作も規範版のとおりにすることになっています。 今までは、福音朗読の終わりに司祭(助祭)は、「キリストに賛美」と言い、会衆も「キリストに賛美」と答えていました。変更後は、司祭(助祭)は「主のみことば」、会衆は「キリストに賛美」と変更されます。 なお、規範版では朗読の終わりの言葉は、第一(第二)朗読も福音朗読も同じですが、日本語版が第一(第二)朗読の時は「神のことば」、福音朗読の時は「主のみことば」と訳し分けているのは、福音朗読が主キリストの言葉であることを明確にするためです。

【信仰宣言】 〈ニケア・コンスタンチノープル信条〉 …わたしたちの救いのために天からくだり。 (一同は頭を下げる) 聖霊によって、おとめマリアよりからだを受け、 人となられました。 (一同は頭を上げる) ポンティオ・ピラトのもとで… 〈使徒信条〉 …イエス・キリストを信じます。 (一同は頭を下げる) 主は聖霊によってやどり、 おとめマリアから生まれ、 (一同は頭を上げる) ポンティオ・ピラトのもとで…

信仰宣言の中での「キリストの受肉の神秘について述べる部分で一同は礼をする」という所作が明記されるようになりました。 信仰宣言は、基本的に〈ニケア・コンスタンチノープル信条〉を唱えますが、「日本のための適応」として、季節に関係なく〈使徒信条〉を唱えることができます。 なお、規範版では、洗礼を思い起こすために、四旬節と復活祭に〈使徒信条〉を唱えることが勧められています。

感謝の典礼

【パンとぶどう酒を供える祈り】

司「神よ、あなたは万物の造り主。 ここに供えるパン(ぶどう酒)はあなたからいただいたもの、 大地の恵み、労働の実り、 わたしたちのいのちの糧(救いの杯)となるものです。」 

会「神よ、あなたは万物の造り主。 現在はコロナ禍で、主日のミサでも奉納の歌を歌わずに唱えている小教区も多いと思われます。奉納の歌を歌わない場合は、司祭は祈りをはっきりと唱えることができます。その場合は、結びに会衆ははっきりと唱えることができます。 ミサの式次第と奉献文が変更される11月末にどのような状況になっているのか、まったく分かりませんが、司祭がはっきりと唱えた場合は、会衆もはっきりと唱えるということを覚えておいてください。 ※紙面の関係で祈りは一つにまとめてありますが、「パンを供える祈り」と「ぶどう酒を供える祈り」は、一つにまとめて祈ることはできません。

【奉納祈願への招き】

司「皆さん、ともにささげるこのいけにえを、 全能の父である神が受け入れてくださるようにいのりましょう。」

会「神の栄光と賛美のため、 またわたしたちと全教会のために、 あなたの手を通しておささげするいけにえを、 神が受け入れてくださいますように。」

祭壇の準備が整うと、司祭は奉納祈願の前に招きの言葉を述べます。会衆は立って、招きの言葉に答えます。 現行版では招きの言葉のあとに沈黙を勧めていますが、会衆が応唱するようにも取れる表現があるため、司祭の祈りへの招きの言葉に、会衆が答える、答えない、という不統一が生じていましたが、改訂版では会衆は応唱することで統一されています。なお、会衆の応唱の言葉は変更されていますのでご注意ください。 日本のための適応として、応唱の後に一同はしばらく沈黙のうちに祈り、司祭によって奉納祈願が唱えられます。 ここから、奉献文(エウカリスティアの祈り)です。

【叙唱前の対話句】

司「主は皆さんとともに。」

会「またあなたとともに。」

司「心をこめて、」

会「神を仰ぎ、」

司「賛美と感謝をささげましょう。」

会「それはとうとい大切な務め(です)。」

古代キリスト教の時代からの伝統に従って、この対話句は三組で構成されていましたが、日本語に訳された時に二組にまとめられました。今回、規範版と同じ三組の対話句に変更されます。 第一の対話句は、「あなたとともに」に変更されています。 第二の対話句は、直訳は「心を上に」と「主に向けています」となりますが、意味が掴みにくいので、現行版で司祭が唱えていた言葉を「心をこめて」と「神を仰ぎ」という対話句にしました。 第三の対話句は、現行版では会衆が唱える言葉を司祭の言葉として採用しています。そして、現行版で省略されていた会衆の言葉が改訂版では訳出されました。 対話句が三組になり、また、最後に会衆の答える部分は今までなかったので、慣れるまではチグハグしてしまうかも知れません。なお、「(です)」は歌う場合は省きます。

【感謝の賛歌(サンクトゥス)】

「聖なる、聖なる、聖なる神、すべてを治める神なる主。 主の栄光は天地に満つ。 天には神にホザンナ。 主の名によって来られるかたに賛美。 天には神にホザンナ。」

叙唱の結びとなる、感謝の賛歌が口語に変更されます。 「万軍の」という言葉は、「軍隊や戦いを連想させる」ということで変更が求められていたので「すべてを治める」となりました。また、「天のいと高きところに」は、受難の主日に行われる枝の行列の時の交唱に合わせて「天には神に」となりました。

【記念唱】

司「信仰の神秘。」

会「主よ、あなたの死を告げ知らせ、復活をほめたたえます。 再び来られるときまで。」

または

会「主よ、このパンを食べ、この杯を飲むたびに、あなたの死を告げ知らせます。再び来られるときまで。」

または

会「十字架と復活によってわたしたちを解放された世の救い主、わたしたちをお救いください。」

聖体の制定の言葉の後に記念唱が唱えられます。 多くの小教区で、会衆は「主の死を思い、復活をたたえよう、主が来られるまで」と唱えていると思いますが、現行版は二つから一つを選んで唱えるようになっていたことを知らない人も多いのではないでしょうか。 変更後は、規範版にしたがって三つの中から一つを選んで唱えるようになります。したがって、「誰が、どうやって選ぶのか」、「今日のミサはどれを選び、選んだものをどうやって会衆に伝えるのか」など、解決しなければならないことがいくつかあります。だからでしょう、「三つから選べるようになっていると混乱が起きるので、『東京教区では、記念唱はこれを唱えることにします』と決めて欲しい」という声も聞かれます。しかし、典礼の豊かさが失われることになってしまうので、東京教区典礼委員会として一つに決めることはしません。 なお、会衆の唱える言葉は「復活した主キリストに向けられている」ことが分かるように訳されています。

【栄唱】

司「キリストによって、キリストとともに、キリストのうちに、聖霊の交わりの中で、全能の神、父であるあなたに、すべての誉れと栄光は、世々に至るまで、」

会「アーメン。」

言葉に変更はありませんが、変更後は、歌う場合も唱える場合も会衆は「アーメン」だけを唱えるように統一されます。 『典礼聖歌』で、会衆は「すべての誉れと栄光は…」から歌うようにと指示されているので、歌わない場合でもここから唱える小教区が多いと思います。しかし、ミサ典礼書では、現行版も改訂版も会衆は「アーメン」のみを唱えるように指示されています。したがって、歌う場合も唱える場合も会衆が「アーメン」のみを答えるようにすることは、よく周知をして、今から実践しても構いません。しかし、他の変更箇所について、現行のミサ典礼書を使って実践することは控えてください。例えば、朗読の終わりに侍者が「神のみことば」と言い、会衆が「神に感謝」と答えるなど、変更後に混乱を引き起こすような変則的な実践はしないでください。

【主の祈りの副文】

司「…わたしたちの希望、救い主イエス・キリストがこられるのを待ち望んでいます。」

会「国と力と栄光は、永遠にあなたのもの。」

現行版の「限りなくあなたのもの」が、改訂版では「永遠にあなたのもの」に変更されます。

【平和のあいさつ】

司「主の平和がいつも皆さんとともに。」

会「またあなたとともに。」

他の箇所と同じように「司祭とともに」が「あなたとともに」に変更されます。 変更箇所の説明から少し離れますが、「司式者と会衆のあいさつ」は、この言葉のやり取りで終わっています。この後に司式者が言う「互いに平和のあいさつを交わしましょう」の「互いに」は、「近くにいる者同士」という意味なので、会衆席にいる人は「自分の席の近くにいる人たち」と、司式者は「近くにいる共同司式者や侍者」とあいさつを交わします。 現在、多くの小教区では「互いに平和のあいさつを交わしましょう」という言葉の後、司式者と会衆が一礼してあいさつする習慣になっているようなので、平和のあいさつの所作について見直すのに良い機会ではないでしょうか。

【平和の賛歌】  

世の罪を取り除く神の小羊、いつくしみをわたしたちに。  世の罪を取り除く神の小羊、いつくしみをわたしたちに。  世の罪を取り除く神の小羊、平和をわたしたちに。」

最後の部分は、現行版では「平安」になっていますが、直前の【平和のあいさつ】の「主の平和」という言葉と一貫性を持たせて、「平和」に変更されました。

【拝領前の信仰告白】

司「世の罪を取り除く神の小羊。  神の小羊の食卓に招かれた人は幸い。」

会「主よ、わたしはあなたをお迎えするにふさわしい者ではありません。  おことばをいただくだけで救われます。」  

または

会「主よ、あなたは神の子キリスト、永遠のいのちの糧、  あなたをおいてだれのところに行きましょう。」

司祭の唱える部分は、「招かれた者」から「招かれた人」に変更されます。 会衆の答える部分にも変更があります。どのような理由や経緯があったのかわかりませんが現行版は〈ペトロの信仰告白〉(ヨハネ6:68)に基づく日本固有の式文が採用されました。規範版は〈百人隊長の言葉〉(マタイ8:8)に基づく式文ですので、改訂版にはこちらも載せることになりました。 どちらかを選ぶことができますが、「一つに決めて唱える」、「奇数週は現行版、偶数週は規範版、というようにして両方を唱える」など、それぞれの共同体で工夫をして混乱の起きないようにしてください。

閉祭 【派遣の祝福】

司「主は皆さんとともに」

会「またあなたとともに」

司「全能の神…」

会「アーメン。」

他の箇所と同じように「司祭とともに」が「あなたとともに」に変更されます。 また、司祭が任意で用いることができる【荘厳な祝福】も改訂版に掲載されています。 【荘厳な祝福】は、「…くださいますように。」と「アーメン。」が三回繰り返された後に祝福を願う言葉があります。

司「…くださいますように。」

会「アーメン。」

司「…くださいますように。」

会「アーメン。」

司「…くださいますように。」

会「アーメン。」

司「全能の神、父と子と聖霊の祝福が皆さんの上にいつもありますように。」

会「アーメン。」

【閉祭のことば】

司「感謝の祭儀を終わります。  行きましょう、主の平和のうちに。」

会「神に感謝。」  

または

司「感謝の祭儀を終わります。  行きましょう、主の福音を告げ知らせるために。」

会「神に感謝。」  

または

司「感謝の祭儀を終わります。  主の平和のうちに行きましょう、 日々の生活の中で主の栄光をあらわすために。」

会「神に感謝。」

この部分に変更はありませんが、司祭の言葉が二つ追加されましたので、不思議に思わないように載せておきます。


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